アンソロジー同人誌の作り方(慣れてきた)
2020~2021年でアンソロ企画5本やって、他の人のアンソロの裏方も2本手伝って、
今も2本進行中です。だいぶ慣れてきた。
以前にアンソロ同人誌の作り方と称してごちゃごちゃ書いてたんですが↓
これ読み直すといらん情報量多すぎてわかりにくくね?と思ったのでちょっとブラッシュアップします。
※大筋の内容は同じです
というか、シンプルな企画の手順とテンプレート、という感じです。
ここでは、比較的一般的と思われる、
「参加者を募集し、作品データを提出してもらい、それをまとめた原稿で作る本」
を想定して書きます。
1. 必要なものを準備する
作業タイミング:最初
所要時間:なし というか用意するもの自体が「時間」
必要なのは熱意と日々のちょっとした自由時間。以上。
どういう企画にしたいかにもよるのですが、お金は最悪なくてもいけます。
お金かけずにアンソロした話はこちら。
pixivFACTORYとBOOTHを利用すれば、主催も執筆者も他の人も等しく「読みたければ1冊分買うだけ」というシンプルなスタイルになれます。
2. やりたいことを決める
作業タイミング:最初
所要時間:なし 気が付いたら脳内にある(必要があれば随時アップデートはする)
「こんなアンソロ欲しい~~~!!!!」というのを明確化する。
ただ何のアンソロか、というだけでなく、
「夏コミに出たい!」とか「○○さんと一緒にやりたい!」みたいなのも含めての「やりたいこと」です。
結構大事。
これがしっかりしていると重要な部分はブレずに進められると思いますし、
逆に縛らなくていいところは縛らずに済むと思います。
3. 募集要項を決めて告知・募集する
作業タイミング:締め切りまでの間の随時、できるだけ早めに
所要時間:適宜
やりたいことがはっきりした段階で、Twitterなどで募集を開始します。
まずは画像にまとめて貼り付けるだけでも充分です。
少なくとも最初から提示しておくべき情報は以下。
- どんなアンソロなのか(=前項の「やりたいこと」)
- 執筆者に金銭負担はあるか / 謝礼(献本を含む)はあるか
- 参加表明方法
他は順次決めたり集まってくれた人と一緒に詰めていく形でも間に合います。
- 原稿の仕様
- スケジュール
- 原稿データの提出方法など
- 連絡手段
- 寄稿した原稿の取り扱い
そもそもどうやって決めればいいのか、を書き始めると長くなるので最後に書きます。次!
4. 必要な原稿を作る
作業タイミング:締め切りまでの間
所要時間:時間の許す限り
自分の作品ももちろんですが、例えば以下のような必要ページを作っていく必要があります。
- 表紙
- 中表紙
- 目次
- 作品ごとの扉ページ
- 奥付
自分で作れるならそれでよし、誰かに依頼するなら早めにお願いしましょう。
5. 締め切りのリマインドをする
作業タイミング:締め切りまでの間の随時
所要時間:適宜
参加表明をもらっている場合はその方に、提出=参加システムなら募集と兼ねて。
定期的に、「○月○日が締め切りです」「何かあれば声掛けてください」をしつこいくらい言います。
締め切り直前と締め切り時は「遅れて出したい場合は、いつまでに出せるか&ページ数連絡してね!」も添えて。
「単にド忘れ防止」「企画ちゃんと動いてるアピール」「質問とか気軽にくれ」などなど色々な意図を込めて。
6. 締め切り、原稿データ回収
作業タイミング:締め切り後
所要時間:方法にもよるが10分程度
決めてあった方法で原稿データ回収。
7. データチェック
作業タイミング:データ回収後
所要時間:データ数にもよるが1日程度
以下確認します。
- あらかじめ決めてあった原稿仕様と違うところはないか
- 企画や法律を考慮してのルール違反はないか
- その他明らかにおかしなところはないか
チェック完了したら本人へ通知します。(問題なければその旨を。問題あれば修正をお願いする旨を)
なお、個人的には、「レイヤー結合されていない」「縦横サイズは合っているのに解像度が違う」等の軽度の問題であれば勝手に編集しています。
8. 掲載順の決定
作業タイミング:データチェック後・あるいは平行しての作業
所要時間:作品数にもよるが半日程度
作品の掲載順を決めます。
アンソロのコンセプトによっても基準が変わってくると思うのでここで言うことはないです。主催権限で好き放題しましょう。
9. 入稿データとして仕上げる
作業タイミング:データチェックや掲載順決定の後・あるいは平行しての作業~入稿予定日までに
所要時間:ページ数にもよるが1日~1週間程度
ここまででデータは出揃っていますが、必要に応じて仕上げていきます。
ここでの目的は「本文原稿を完成した状態で揃えること」です。
- そもそも入稿できる形式になっていないものは調整する
- 例えば、1ページ丸々ではなくカットだけ提出してもらったあとがきとか、生テキストでもらった小説とか
- ノンブル(ページ番号)が必要なら入れる
- 実際の配置に応じて目次ページを調整する
などの作業になります。
以下のようなチェックリストを用意し、何度か見直しながら進めていきます。
- 目次や主催側で編集した内容に誤りはないか(ページ番号と作品の対応、作者名などの誤記・コピペミスなど)
- ページには抜けや重複がないか、前後していないか
- ファイル名は問題ないか
- 印刷所さんのルールに従います。ルールがなければページ番号=ファイル名にしておくと扱いやすいです
10. 入稿する
作業タイミング:入稿データ完成後
所要時間:10分程度
入稿します。完。
印刷所さんによりますが、サイトからファイルをアップロードするだけで済むところならあっという間です。
11. 本以外の必要なものを作る
作業タイミング:余裕があるときに
所要時間:内容にもよるが1日程度
必要に応じて、例えば以下のようなものを作っておきます。
- ノベルティ
- 告知用の作品サンプル
- (イベントに参加するなら)ポスターやペーパー、値札など
- (通販するなら)紹介用の画像など
モノによって作るタイミングが変わってくるので、もっと早い段階からやる必要が出てくるかもしれません。
ノベルティはあくまでオマケ。当然なくてもOK。
表紙デザイン等の使いまわしの場合は、作るモノさえ決めておけばあまり時間はかからないのですが、
どちらにしても予算には無理が出ない程度にしておきましょう。
12. 現物が届いたらチェック
作業タイミング:印刷された現物が届いたとき
所要時間:分量にもよるが1時間程度
印刷に問題がないか、ざっと確認します。
見るべき部分は、
- ページの並びはおかしくないか・抜けがないか
- 印刷ミスなどがないか
など。
もし何かあれば他の個体も確認し、共通しておかしそうなら印刷所さんに問い合わせて対応を決めましょう。
(もし印刷所さん側のミスなら刷り直してくださると思います)
大抵の印刷所さんは注文数より多めに送ってくださっていると思いますので、1冊2冊なら我慢してよけておきましょう…。
13. 献本
作業タイミング:現物チェック後
所要時間:分量にもよるが半日程度
各執筆者さんへ1部お渡しする約束だった場合は梱包してお送りします。
郵送や宅配・イベントで手渡しなどなど、方法はそれぞれで。
自分の場合はクロネコヤマトさんの匿名配送サービスを利用してお送りしています。
14. イベントや通販での頒布
作業タイミング:イベント当日、あるいは随時
所要時間:適宜
ここまで来るとこの記事の主旨とあんまり関係ないので省略。
そもそも執筆者さんにのみお渡しする企画なら関係ないですね。
★補足その1:便利ツール
- 募集に便利!
- Twipla https://twipla.jp
- 募集要項を書いて出欠取るのに最低限揃っています。
- ぷらいべったー https://privatter.net
- 参加表明してくれた人だけに見せたい内容がある場合に便利。Twitterで企画用リストを作りリスト限定公開すればOK。
- Twipla https://twipla.jp
- 提出してもらうのに便利!
- Googleフォーム https://www.google.com/intl/ja_jp/forms/about/
- ファイルのアップロードフォームを付けることもできるので、「ペンネーム」「連絡先」「提出原稿」などをまとめて回収可能。
- Googleドライブ https://www.google.com/intl/ja_jp/drive/
- 共有フォルダを作ってそこに置いてもらうならコレ。
- 多少使いにくい感じはありますが、PSDファイルもブラウザ上でプレビューできるのは優秀。
- フォルダごとまとめてダウンロードしてこれるので提出データの回収も楽々。
- 何度かデータをやり取りする想定ならここで共有しちゃう方が手間が少ないかも。
- Googleフォーム https://www.google.com/intl/ja_jp/forms/about/
- 原稿チェックに便利!
- Honeyview http://www.bandisoft.com/honeyview/ ※Windows用アプリです
- レイヤー統合状況などのチェックはできませんが、ページ並びなどの確認には最適。
- 見開き表示設定にしてしまえば、実際の本の見た目と同じように左右に並べてページ送りしながら確認できます。
- Honeyview http://www.bandisoft.com/honeyview/ ※Windows用アプリです
★補足その2:企画内容の細かい決め方
「3. 募集要項を決めて告知・募集する」の続き?です。
アンソロどころか個人誌も作ったことがない!という場合は特に、何をどう決めればいいのか全然分からない、ということもあると思います。
(自分がまさに、初アンソロ以前に個人誌作ったことないパターンでした…)
かなり独断と偏見ですが、基本的には「無理なく企画を進める」という観点で、思ったことを記載しておきます。
独断と偏見です。
どんなアンソロなのか
これはここに書くの蛇足ですが…。
自分の場合は「自分が読みたいアンソロ」以上でも以下でもないです。
「極論、読み手はどうでもいいので書き手みんなが楽しいやつ」というのも毎回掲げていますが、
これは「書き手が楽しく書いたやつを読みたい」という理屈なので、やっぱり結局は「自分が読みたい」になりますね。
執筆者の金銭負担・謝礼や献本
今まで主催・寄稿したアンソロは、大半が
- 印刷費用などは主催が負担する
- 頒布した際の利益は主催のもの
- 寄稿した人には完成した本を1冊差し上げる
でした。
例外は、
- pixivFACTORYとBOOTHを利用、本が欲しい人は誰もが等しく1冊買うスタイル(※自分の主催)
- よくある条件に加え、完成品を複数くれる
- よくある条件に加え、お礼としてイベント打ち上げの焼肉おごってくれる
がありました。
欲しければ買うスタイルは、逆に言えば冊子いらない人は執筆者ももちろん買わなくてOK、電子版(PDF)は差し上げています。
複数くれるパターンは、自分のものにしても他人にあげてもなんなら自分で頒布してもいいよというものでした。
焼肉はおいしかったです。
これは何が正しいというのはないと思っていて、コンセプトや主催の懐事情に左右されてよいと思います。
ただ金銭が絡む話なので、後からの(執筆者さんにとっての)下方修正になる変更は避けたいですね。
ちなみに、企画のシンプルさという観点でのオススメは、圧倒的にpixivFACTORY・BOOTH利用です。通販の手間もないので。
参加表明方法
シンプルな企画であれば「原稿仕様や提出方法を公開しておき、提出をもって参加とみなす」が一番わかりやすいと思います。
事前に参加表明してもらう形でもよいのですが、
・間に合わなかったら申し訳ないので参加表明は気が引けるという意見が散見される
・そもそも主催側も事前に知ったところで別にそれで何か変わるわけではない
…ということもあります。
当然企画によっては表明が前提、あるいはあればスムーズになるパターンもありますし、内容などに応じてで。
原稿仕様
以下が提示できれば充分かな?と思います。
- 本のサイズ(A5とかB6みたいな)
- イラストやマンガを想定した画像データの場合:原稿データの縦横サイズ(px)、解像度、カラーモード、提出形式(psdとか)
- 小説などを想定したテキストデータの場合:行・列の文字数など、提出形式(pdfとかwordとか生テキストとか)
- その他、作品ページ数や文字数の制限などがあれば
画像もテキストも、テンプレートが提示できるのであればしましょう。
想定される参加者さんのリテラシーがなんとなく分かっている場合は、情報量を増減して調整するのもアリだと思います。
(例えば画像は縦横サイズさえ提示しておけば大抵はなんとかなるはず)
スケジュール
完成時期が決まっている場合はそこから逆算していきましょう。
決まっていない場合は作業にかける時間を単純にざっくり加算して考えればOK。
大体、以下の作業期間に区切れば考えやすいかなと思います。
- 募集~制作期間
- 締切~原稿データ作成~入稿
- 印刷所さんが提示する納期
例えば自分の場合、
「10/1のイベントに出たい!」という目標があるとすると…
・印刷所さんの納期10日にバッファ取って半月くらいとする(=入稿予定日を9/16頃ということにする)
・入稿のデータ作るのを長めに見積もってこれまた半月くらいとする(=最終締め切りを8/31頃ということにする)
・遅れる方もいるかもしれないから、締め切りは一旦8/20で告知しようかな
という感じで考えます。
提出方法
例えば以下のような方法が挙げられます。
何度か企画してみた感じ、ネットに疎い方にとってここが一番ネックになるように感じました。
わかりやすい手段・説明を用意しておく必要があります。
Googleフォームで提出してもらうのが一番わかりやすいかな?とは思っていますが、
何度かデータをやり取りする場合に少し大変になるので、
個人的にはGoogleドライブの共有フォルダを用いることが多いです。
他に共有フォルダの利点を挙げるとすれば、
「提出」というと多少のストレスというか気負いがありそうなので、
「共有フォルダにいつでも設置してOK、更新も好きにどうぞ、締め切り時点のものを回収します」とできることです。
連絡手段
例えば
- TwitterやPixivなどのDM
- Discordなどのチャットツール
- メール
など。
これは職業柄ですが「メールは届かないものと思え」という認識なのと、他人のメールアドレスを持つのに抵抗があるのとで、
基本的にはTwitterのDMでやりとりしています。
企画用にグループDM立てることもあります。
(主催をフォローするかDM開放しなきゃいけない・グループDM内のAさんがBさんをブロックしているときBさんは参加できない・未成年参加者がいるならR18してるアカウントで参加したくない など、ちょいちょい引っかかることはあったので、オススメするかと言われると…ではあります)
寄稿した原稿の取り扱い
よく見るのは「一定期間はwebや個人誌等での公開禁止」みたいなルールですね。
これも企画のコンセプト等によっても変わってきますが、主催の好みで設定してよいと思います。
自分の場合、事情がない限り「制作中だろうが頒布開始直後だろうが数年後だろうが自分の作品は好きにしてください!!!」にしています。
・そもそも過去に公開した作品やリメイクも寄稿OKにしているので、禁止すると辻褄が合わない
・一定期間を管理するのがとてもめんどくさい
・掲載していい?みたいな問い合わせ受けるのがとてもめんどくさい
・他の人が素晴らしい作品見る機会が増えるならそれがいいし自分としてもふとタイムラインに流れてきてほしい
・自分が作業をTwitterに垂れ流さないと生きていけないタイプなので禁止すると自分自身が困る
・自分が寄稿したアレコレを思い出してみると、そのほとんどが公開OKになった時にはもう忘れてるし思い出してもデータ探すのめんどくさくて結局何もしない
などの理由です。ひでえな。
もちろん、こうすべき!という話じゃなくて、
自分の場合は「自分と他の書き手さんが楽しい本」というコンセプトなので、禁止する意味がないよな、という意味合いです。
★補足その3:印刷所さんどうする?
贔屓にしている印刷所さんがあればもちろんそれでどうぞ。
個人的には「おたクラブ(大阪印刷)」「ペンタロー」がオススメです。
同人誌印刷所おたクラブ
同人誌印刷ペンタロー
いずれも
- カラー印刷がとてもキレイ(RGB入稿でも色味の変化が少なく鮮やか! ←この表現で意味が分からない人にこそオススメ)
- 当然白黒印刷もキレイ
- ノンブル(ページ番号)入れが不要
- 予約システムなどの煩雑なものがなく、入稿できるタイミングになり次第本の仕様を指定してデータ送るだけ。ネット通販的な手軽さ
- かなりお安い(部数や仕様にもよりますが)
とオススメポイントが多いです。
おたクラブさんはページ数とデータの照合をしながら入稿できるのでかなり安心感がありますし、
ペンタローさんは入稿後のサポートがとても親切な印象です。(「もし背表紙ズレてたら教えてください!」と連絡したら、写真付きで「大丈夫でしたよ!」と返してくれました…。あと、タイミングもありますが、「実はちょうど新しい高性能印刷機入れたばかりなんです、せっかくですし新旧比較して良い方選びましょう!」と当時まだ販売してなかったプランでやってくれたりしました…神かな…?)
単価を比較するとほとんどの場合でおたクラブさんの方が安くなりますが、不慣れな方はペンタローさんの方が安心かも?
あとは何度か話に出したpixivFACTORYですが、こちらは入稿の楽さが圧倒的。
デメリットとしては「ノンブル必要」「単価がお高い」「印刷クオリティが微妙な時がある」あたりですね。
ただ、通販までを含めたお手軽さがすごいので、「突発企画とかのカジュアルなもの」「再販したいけど増刷するのはヤダ…という時」あたりには打って付けだと思います。